PCメールのアクセス制限 〜閉じられたケータイメール空間〜

このブログのエントリを読んで、考えてしまった。iPhoneを買うことをためらわせる理由が、日本のケータイメールのアクセス制限にある、というのだ。

iPhone の購入をちょっとためらう – ppmweb

今日1番厳しいな、と感じたのは、Softbank が提供している Eメール(i)も(読んで字のごとく)普通のEメールだから、他の日本の携帯からは PC メールと見なされて、アクセス制限をかけられる可能性が高い、ということ。つまり、日本の携帯とすんなりメールする手段がない、ということ。特に docomo はデフォルトで PC メールを制限しているから、絶望的だ、ということ。


僕は1つしかない携帯を、MNPiPhone に変えたい、と思ってるんですが…この場合、かなり厳しいですね。iPhone にしたとたんに docomo ユーザーの友達との連絡手段がなくなってしまう。

docomoがデフォルトでPCメールを制限しているかどうか、ドコモのホームページからではわからなかった。手元のドコモケータイの設定画面を見た限りでは、そういうわけではなさそうだ。ただし、受信拒否のアドレスの設定は相当面倒なので、ケータイ以外のメールを一括して受信拒否している人が多い、ということなのだとしたら、それはそうだろうと思う。ともあれ、このブログの筆者には「デフォルトで PC メールを制限している」と認識されていることだけは間違いがないし、それが友達を含めての共通認識なのだろうと思われる。

このブログを書いている人は20代の学生と自己紹介をしている。まさに、年代的にはケータイがデフォルトの世代で、友達の多くがネット=ケータイという世界で暮らしているのだということが、書かれている文章からも伝わってくる。

漠然とは感じていたが、このブログを読んで、改めて日本のケータイの特殊性、というよりは閉鎖性を感じるとともに、それが根深い問題だと意識した。日々接する友達との関係に気遣って生きていく冒頭のブログの筆者の世代にとって、ケータイメールの閉鎖空間を飛び出して、そういう制約のないiPhoneに乗り換えることは大きな問題なのだ、ということを、このエントリが伝えている。(結局、この筆者はiPhoneを購入したと書いていた)

たとえば、卒業旅行で海外に行って友達ができ、メールアドレスの交換をしたとする。それがケータイのアドレスであれば、海外の友達がケータイアドレスにメールを送ってきたとしても、それはデフォルト設定のままなら拒絶されてしまうということになる。これは、英語ができるできない以前の問題として、コミュニケーションのルートが閉ざされているということを意味しないか。

一見、普通のメールアドレスに見えているところが、ケータイメールのタチの悪いところだ。実は、日本のケータイメールのアドレスはRFC2821規格に準拠していないものが認められているので、ネットの世界で、このアドレスが無事に受発信できる保証はない、という。(参考記事

仮に受信対象のドメインを指定し、RFCの規定に則ったアドレス(アカウント)の設定をして海外の友達のメールを受け取ったとする。そこに会ったときにデジカメで撮った写真が添付されていたら、それが受け取れない可能性がある。ケータイメールの添付ファイルの受信容量には制限があるからだ。たしか500KBが標準だったと思うが、最近のデジカメは性能の向上とともに1枚のファイルサイズも大きくなって1MBくらいになることが珍しくないから、そうなると、受け取れない。せっかく、言語を超えるコニュニケーション手段としての写真が添付されていても、それすら受け取れないのだ。

本当は、iPhoneの”Eメール(i)”が普通の状態なのに、この国のケータイの世界では、それが排除されるべき”異端”となっている。

この構造は、先のエントリに書いた有害サイトフィルタリングと同じで、短期的視点で、少しの利便性・安心と引き換えに大きな可能性を奪っていると言わざるを得ないのではないか。

たしかに、私自身も、容赦なく送られてくる迷惑メールには辟易としている。そこに問題があることは間違いがない。

しかし、ケータイが日本の若年層にとってネットへの入り口なのであれば、そこをちゃんと、本来のネットの世界に通じる道として整備するのが、キャリアという企業のレベルをこえて、社会全体の問題として我々大人たちの責務なのではないだろうか。その時に、どうしても紛れ込んでくる迷惑メールなどの対処については最大限の対策と対応、そして学校で対処法の教育をしていく必要があるとは思うが、一律に扉を閉めてしまう、というのでは、あまりに芸がない。Gmail迷惑メール対策のようなブロックの仕方だって、考えられるはずだと思う。

もちろん、海外とのメールのやり取りなど、ごく限られたことだろう。しかし、小さくても可能性が残っているのと、その可能性が封じられているのとでは、天と地のひらきがあり、本質的にまったく違うことなのだ。

この問題、どこにどう働きかけたら解決されるのだろうか。ひとまず”Answer”を標榜する会社に答えを求めてみようか...。