なぜiPhoneだと使ってしまうのか、の考察(2)

1ヶ月ほど前になぜiPhoneだと使ってしまうのか、ケータイだと使わないのか - Batayan’s Logということを書いたが、その後、その理由を考え続けて最近思っていることと、iPhoneを使っていて私に起きた変化を書いておこうと思う。

約1ヶ月前のエントリでは、iPhoneを買って「パソコンの出番が減った」ことを生活の変化としてあげたのだが、その後の1ヶ月でおき始めているのが「(2台持ちの)ケータイを置き忘れるようになった」ことと、「手帳も置き忘れるようになった」ということ。つまり、iPhoneが、ケータイと手帳の重要性を相対的に低下させたということが、これまでほとんど起きることがなかったこれらの「置き忘れ」を、この1ヶ月ほどで何度か引き起こしている、ということなのだと思う。

仕事を始めてからというもの、スケジュールを管理する唯一の”よりどころ”であった手帳は、代替の効かない、なくしたらそれっきりの(考えてみれば危険なやりかただった)重要なモノなので、思いつく限り、置き忘れたこともほとんどなく、まして行方不明になったことはなかった。ところが、数週間前にその事態が起きてしまった。どこを探しても見つからないのだ。いただいた名刺をいくつか手帳に挟んでいたので困ったのだが、スケジュールの機能はほとんどiPhoneGoogleカレンダーiCalに収まっていたので、その意味では致命的な打撃とは感じなかった。*1

私の場合は、もともと今年の3月くらいから使い始めていたGoogleカレンダーを、iPhoneと自宅のMaciCalにシンクロさせている*2iPhone導入後は手元で簡単にスケジュールの追加変更ができるため、最近ではほとんど手帳からオンラインでのスケジュール管理にかわってしまい、紙の控えは念のために最新2週間分のスケジュールをプリントして持ち歩く程度になっていたので、手帳は事実上、役割を終えてしまっているということを、今回の出来事で改めてハッキリと感じた。

また、iPhoneと2台持ちしている和式ケータイも、このところ、なくしはしないが自宅に置き忘れたり、オフィスのデスクに置き忘れたり、ということが何度もおき始めている。

いまでは、ケータイメールあてのもの以外メールはすべてiPhoneでまとめて送受信しているので、ケータイに転送するという面倒が要らなくなった。返信も、もともと送られてきたアドレスからiPhoneでそのまま返信すればよい。これは、当たり前のようでiPhoneの大きなメリット。

これまで、ケータイに転送されてきた仕事のメールにケータイから返信することで、仕事のメインのアドレスとケータイメールのアドレスに連絡が分散してしまうことを煩わしく思っていたし、大事なメールを見落とす危険も感じていたので、iPhoneでようやくその現実的な解決策を得た*3

アドレス帳も、ケータイのデータをいったんBluetoothMacのアドレスブックに転送してからiPhoneに同期させてあるので、こちらもすでにケータイでなければならない理由もないし、バックアップも問題がなくなった。

こうして、気づいてみると、ケータイを置き忘れてしまうことが多くなり、そしてそれでもあまり大きな支障が出ていないことに気づいた。調べてみると、実は私の場合はケータイを音声通話に利用することがかなり少ないこともわかった。改めて着信と発信の履歴をみると、平日で発信着信ともに、平均してそれぞれ数件程度なのだ。電話をかける場合はオフィスの固定電話を利用することが多いし、多数の関係者がかかわるプロジェクトが多いために、どうしてもccを利用してのメールが連絡の中心となっている。

このため、メール関係の役割をほぼすべてiPhoneに移した後、それまでは毎日充電が必須だったケータイだったが、今では2日に1度の充電でも十分なほどに使用頻度が激減してしまった。実はケータイ”電話”といいながら、電話の機能をあまり使っていなかった。

こうして考えてみると、私がiPhoneを特に大きな不満なく受け入れられたのは、ケータイをケータイ”電話”ではなく、ケータイ”ネットデバイス”、あるいはケータイ”メール端末”として使っていたからなのだ、ということがはっきりした。

よく見てみると、iPhoneに否定的な意見は、音声通話とケータイ独特のサービス(絵文字も含めたケータイメールが最も象徴的)に対して向けられているものがほとんどだということもわかってきた。ネットの関係の機能では、iPhoneに対して本質的に否定的な意見はあまりないのでは、と思うがどうだろうか*4

つまり「なぜiPhoneだと使ってしまうのか」という問いは、正確には「ネット関係の機能だと、なぜiPhoneを使ってしまうのか」ということだ。

その答えは、例に挙げたスケジュール管理のように、クラウドを介してPCなど他のデバイスとも広くシンクロして使えるようにiPhoneは仕組まれているが、現状のケータイのネット関係機能はそうなっていない、ということが根本にあると思われる。既存のケータイでもiPhoneと同じようなことができる、と以前に書いたが、それは端末を独立に考えた場合の話で、クラウドまで含めてネット全体の中に端末を位置づけると、iPhoneとケータイで出来ることには差ができてしまう。

”Phone”という名前がついているだけに、どうしてもPhone=電話=音声通話機というところを(無意識のうちにも)出発点にiPhoneとこれまでのケータイが比較されてしまっているのだと思うが、iPhoneの前にiPod touchを使っていたユーザーからすると、touchとはiPhoneの”Phone抜き”で、その”Phone抜き”の便利さに惹かれてiPhoneを購入したとすれば、そもそもPhoneの機能にはそれほど期待していない。むしろ、その”Phone抜き”が(逆説的だが)携帯電話の電波によって常時接続になることの利便性がポイントなのだ。

そんなことが、この1ヶ月でわかってきた。

*1:幸い、打ち合わせに出向いた先に置き忘れてしまったのを、先方の方が気を利かせて届けていただいたので翌日には手元に戻ってきた。

*2:GoogleカレンダーiPhoneだけの同期であれば無料のNuevaSyncが使えるが、バックアップを多重にするためにiCalとも同期させたかったので有料のSpanning SyncとMobileMeで同期させている。これについてはまた別なエントリで書こうと思っている。

*3:残る問題は、これまでのケータイアドレスを知られてしまった人を、徐々にiPhoneで受け取れるアドレスに移行してもらうことである。

*4:ウェブに関して、ケータイウェブの方が使いやすいというような意見もあるが、これは一つにはケータイの現状のフルブラウザの使い勝手の悪さによるものだろうし、ケータイウェブが使いやすいならそもそもフルブラウザを積む必要がないだろう。