Android・G1は「Googleフォン」「Gフォン」と呼ぶにはふさわしくない

日本時間の24日未明に発表された、Androidケータイ1号機T-mobile G1についての数多くのレポート、なかでも動画をみていて気がついたことがある。

それは、G1の「電話(通話)」機能について、誰も気にしていないし、語っていない、ということ。

iPhoneの場合は、アップルが作ったCMにしても、最後にはかかってきた電話をとる、というシーンが織り交ぜられていたし、実際、留守電機能や三者通話の機能など電話関係の機能にも工夫がこらされ、それをアピールしていた。

しかし、G1に関していうと、Googleが作ったビデオにしても、通話のことなど一言も触れていない。テンキーがどのように液晶画面に出てくるか、といったシーンも織り交ぜられていないし、まして端末を耳に当てたり、マイク付きヘッドホンでの通話シーンなど、一切出てこないのだ。かろうじて、アドレス帳に電話番号を登録するところだけが、ほんの少しだけ、G1が電話機能をもっていることを想像させる程度。アドレス帳を修正変更すると、それがデフォルトでクラウド側でも修正されることがむしろメインのポイント。仮にG1を落としたり壊したりしても大丈夫、ということが重要なのだ。*1

これは、MobileMeがオプションになっていて、iPhoneのアドレス帳機能の(ほぼ)リアルタイム同期がデフォルトではないことと、大きな違いであると思った。

象徴的にいえば、iPhoneでは電話の機能が主でアドレス帳機能が従であるのに対し、G1ではアドレス帳機能が主で電話機能が従である、と言うことができるだろう。

その意味で、これまでAndroidケータイの通称として使われてきた「Googleフォン」あるいは「Gフォン」という呼び方は、「フォン」が電話機能を表す言葉であると捉える限りは呼び方としてふさわしくないものだと思う。

その対比で考えるなら、iPhoneは、まだ「フォン」としての体裁をもった端末であるといえる。

デモの映像をみる限り、G1はGmailストリートビューを含むGoogleマップなどのGoogleの基本サービス以外には、これといって一般のユーザーを引きつけるようなネイティブアプリはなさそうだ。これは、基本ソフト(OS)と最低限のアプリだけしか入っていないパソコンの姿と似ていると思った。

ユーザーが好きなようにソフトを入れ、場合によってはソフトを自作して使っていく、というパソコンの姿のモバイル版がG1だ。そう考えると、ソフトの流通をAppleのappストアにくらべて柔軟に許容するGoogleの姿勢が一貫したものとして理解できる。

それと比べるなら、iPhoneは従来の携帯電話ビジネスの延長線上にかろうじて乗っていて、Appleらしく魅力的ではあるが、拡張性やカスタマイズに関しては余地が少なく、その意味では”いじりがい”という魅力の少ない”専用端末”だと言うことができる。

これまでの携帯電話と、パソコンの間にiPhoneとG1を位置づけていくなら、

携帯電話 - iPhone - G1(Android) - パソコン

という関係になる。

その意味では、iPhoneとG1は、厳密には競合・対抗する機種ではなく、(長い目でみて)お互いに棲み分けていく近接ジャンルの端末だと捉えるべきなのだと思うし、G1が登場することによって、iPhoneの立ち位置が一層明確になるのではないだろうか。

もっとも、それはG1が実際に市場導入され、iPhoneと同様に、さまざまなユーザーレポートが蓄積されるまでは、ひとつ仮説にとどまる。

iPhoneに飽き足らない人たち、ギークと呼ばれるような人々は、次第にiPhoneからAndroidに移っていくかもしれない。
その時には、既存の高機能ケータイのユーザーがiPhoneをはじめとするケータイに近い形のスマートフォンジャンルに流れ込んできているのではないかと思う。

そうなると、既存の携帯端末市場は、中期的にみれば、安くて単機能ないし低機能の機種が中心となり、コモディティ化していくと考えられる。

その意味において、今は”スマートフォン”と呼ばれているジャンルの携帯端末が、現在の高機能携帯電話ジャンルを飲み込んでしまう日も、そう遠くないのかもしれない。

*1:ということは、他人のパソコンを借りるようにG1を借りて、自分のGoogleのアカウントでログインすると、Gmailにせよ連絡先(アドレス帳機能)にせよ、そのG1はあたかも自分の携帯端末と同じように機能する、ということになる。