iPhoneの対抗機種(?)NOKIA Tube発表と、「スマートフォン」カテゴリーが消滅する日
いよいよ、NOKIAのタッチスクリーン携帯”Tube”(NOKIA 5800)が発表される。iPhoneの対抗機種という捉えられ方が多いが、メーカー同士という視点では正しい捉え方と言える部分もあるものの、携帯業界全体で見れば、iPhoneやAndroid G1などともあいまって、いよいよ「スマートフォン」というカテゴリーが既存の携帯電話カテゴリーに侵食を始めるきっかけになるような気がしてならない。
少し前のことになるが、鈴の音情報局blogで、こんなエントリーがあり、私もちょっと思うところがあったし、またKDDI小野寺社長の記事ともあわせて興味深く読んだので、書いておこうと思う。
このエントリーの、「スマホ(スマートフォン)を一般の携帯電話と分けるな」という主張は同感だし、また放っておいても、この先数年から長くて10年のうちには、スマホというカテゴリ自体が消滅してしまうのではないだろうか、という気がしている。
考えてみると、まだiモードが開始されて10年も経たないというのに、私たちの生活はすっかりケータイ、それも独自独特な”和式ケータイ”の世界にどっぷりと浸かった状態になっていて、その状況は、ちょっと宗教じみている、と感じることすらある。
キタの内部にだって外部のばら色の世界の情報は漏れてしまっているんだから自由貿易の日本国内には情報なんてあっという間に広がる事は予測できるだろう。
と思いきや、情報はいくら広まっても、絵文字とかケータイメールとか、そういったいわば”教義”にも近いものに守られて、おいそれとは広まりそうにはない。iPhoneでも、否定派からはさんざんその点がヤリ玉にあがっていたわけなので、
一番独自部といえばメーラーとWEBアクセスだ。後はJavaアプリの実効環境。
これらはスマホ上にメーラーやブラウザアプリを作ってプリイン又は公式ホームページ
上からダウンロードして使えるようにするべきだ。スマホ上の一アプリとして確立すべき。
という指摘は、過渡期の経過措置としてその通りだと思う。そのようにして、
これでスマートホンの国内での魅力のなさがほぼ消せるだろう。
というか、これでスマートホン以外もスマートホンと同じ立場に立てるようになります。
スマートホンは何でも出来る汎用機であることをそろそろキャリアが見せ付ける時が来たのではないか?
(中略)
一部のマニアのためではなく、全てのユーザーに開かれたスマートホン環境を構築すべきだ。
という意見には、私も賛成だ。
ところが、たまたま同時期にKDDI社長の会見記事が出ていたので読んだところ、残念ながらそのようにはとらえられていないようだ。
「携帯電話も時計や眼鏡のようにファッション化していく。そうすると1台では足りなくなる。iPhoneもファッションだろう」
「まだ(テンキー式)携帯電話の方がスマートフォンよりも使いやすい」
たしかに、音声通話や(現状の閉じられた)ケータイウェブを使うことを前提にするなら、スマートフォンは使いにくい。しかし、将来にわたって、この前提が維持されるのだろうか。また、この前提を維持したうえで、au/KDDIとしての成長戦略をどのように描いているのだろうか。そこに、疑問を感じてしまう。
また、iPhoneをファッションと捉えることを一概には否定しないけれど、そういう捉え方しかしていないとすれば、余りに一面的過ぎる。
iPhoneを含むスマートフォンを、PCに置き換えて考えてみる。同じPCの機種で、ビジネスソフトを使う人もいれば、ゲームをする人もいる。どう使うかはユーザーが決めることだ。これはスマホも同じはず。なぜビジネスユースに限定されなければいけないのか。キャリアにとっても、様々な使い道で使ってもらった方がよいはずではないか。また、PCでもゲーム向きのスペックとか、ビジネスユースに向いた仕立てのものがあるように、スマートフォンにも、ビジネス向けに限らないバリエーションが考えられる。
もちろん、上場会社のトップとしてうかつな発言が出来ないという点は割り引いて考えなければならないのだと思うが、回線容量の問題を脇に置けば、ARPUのアップのためにもスマホは貢献するはず。固定網ビジネスや来年にはWiMAXもグループ内で手がけるKDDIであれば、携帯の回線容量をオーバーする部分を固定網やWiFi・WiMAXでカバーし、どのように収益のチャンスを増やしていくか、ということも視野にあるべきだと思う。
ドコモが販売しはじめたBlackBerryは、その小型タイプライターのようなスタイルからしてもビジネスユース色が濃いが、iPhoneやAndroid G1、そしておそらくはNOKIA 5800も、ビジネス用途に限らず、使い方次第でエンターテイメント色の濃い端末になっていく。もちろん、現時点ではこうした端末を使いこなせるユーザーの数は限られるだろうけれど、10年後の10代〜20代の多くは、スマートフォンかどうか、などという枠組みを超えて、こうした端末を自在に使いこなしているのではないかと思うし、端末自体も、より使い勝手のよいものに進化していくと考えるのが自然だ。*1
そうなったら、スマホかそれ以外か、という区分けは実質的な意味を失ない、現在の”普通の”ケータイの上位機種が、今はスマホと呼ばれているジャンルの機種に取って代わられる可能性は高いのではないか。それが10年先の話と思うか、10年もしないうちにやってくると思うかは、経営判断ということになるだろうけれど、忘れない方がよいと思うのは、先にも述べたとおり、iモードをはじめとする今の日本のケータイ電話の”常識”が出来て、まだ10年も経っていないという事実である。