iPhoneの故障・交換で感じた、設計思想の違い

発売日以来使ってきたiPhone3Gが、突然故障してしまった。Safariが不安定になったので、一度電源をオフにして再起動したところ、画面にiTunesのアイコンとUSBケーブルのイラストが出るだけで、緊急電話しかかけられない状態になってしまったのだ。

Macと接続しても、iTunesからは、SIMが入っていないかSIMがロックされている、というエラーメッセージが出るだけで先に進めない。何度か再起動など繰り返しても同じだったので、アップルストアに持ち込んだところ、本体交換ということになった。

幸い、その場で交換できた*1のだが、改めて感じたのは、iPhoneは壊れても困らないように作られている、ということ。

たまたま本体が故障する直前にバックアップをとっていたので、意識的に同期させないでいたSafariのブックマークを除いて、失われたデータはなかった。iPhotoに同期させていなかったカメラロールの写真もすべて元に戻ったし、SMSのやりとりや、電話の履歴まで復元できたのは、ちょっと驚きだった。

アドレス帳やスケジュールのデータは、消失すると取り返しがつかないのでMobileMeとSpanning Syncを使って、iPhoneのほかに、クラウドMobileMe+Google)・Mac本体・iPod Touchと4重にシンクさせてバックアップするようにしていたので心配はしていなかったのだが、ほかのデータもここまで見事にバックアップされていることには驚いたし、それがiTuneにつなぐだけで、少々時間はかかるものの、手間はかからずに元の状態に戻せてしまうのには、改めて感心した。壊れて困ったどうしよう、という感覚はなくて、アイコンの並びやパスワード設定など復元されないものを再設定するのがちょっと面倒だな、と感じる程度のことだった。

日本のケータイで、機種変更をするたびに面倒な思いをすることを考えると、iPhoneのようなバックアップシステム*2ならこの先の新機種が出た時にもその手間は最小限ですむだろうし、こうした手間を減らすことが、新機種への更新を促す要因として小さくない影響を持つだろうと思うのだが、この点は見過ごされがちではないだろうか。

こうしてiPhoneの本体交換をして思うのは、iPhoneは、壊れても困らないように作ってある、そのようにシステムの全体が設計されている、ということだ。それは、新機種へのスムーズな乗り換えも意味している。そのかわり、日本製の端末と比べると、(データがあるわけではないのでニュースなどの印象だが)トラブルが発生する可能性は高そうである。

一方で、日本製の端末は、壊れないように作ってある、と思う。これまで何台もの日本製携帯電話端末を使ったけれど、故障して本体交換をしたことはないし、販売店に持ち込まなければならないトラブルに遭遇したことがない。しかし、壊れないことが前提なので、万一壊れたり、無くしたりしてしまったら、なかなかデータなどを取りもどすのは難しいし、日頃のバックアップにも手間がかかる。機種変更ともなれば、新機種を手に入れる喜びと同じくらいに、データなどを移す手間を考えるのが憂鬱になり、私の場合、データを移しきるまで、しばらくは新旧両機種を持ち歩くはめになっていた。

ユ−ザーからすれば、壊れないように作るけれど壊れると面倒なのも、壊れてもいいように作ってあるが本当に壊れるのも、どちらも歓迎できることではない。

ただ、壊れても困らないように作る、というのは、ユーザーフレンドリーな設計として大前提にあるべきだと思うし、それが買い替えの促進にもつながるのだから、もっと日本のメーカー・キャリアも本腰を入れて取り組むべき課題だろう。壊れても困らないように仕組みが整っていて、さらに壊れないということになれば、それがユーザーにとって最も望ましい端末なのだから。

*1:余談ながら、私の機種はiPhone3G 16GBのホワイト。交換された本体のファームバージョンは2.0.2だった。

*2:日本のケータイの場合、たしかにSDカード等の採用で以前よりはバックアップが容易になったが、私の使用経験がある機種の場合だと、メールはメール、アドレス帳はアドレス帳といった具合に個別に手動でバックアップしなければならず、PC/Macと同期させるだけで自動的に丸ごとバックアップ/データの復元が可能なiPhoneとは使い勝手が根本的に異なる。こういう点も、カタログスペックには現れない、体感しないと分からない差である。