NOKIA CEOの語った現状認識

NOKIAのCEOが今月の初頭にシリコンバレーで行った講演の記事を読んでいて考えさせられた。

 「1990年代のモバイル市場では欧州が世界の最先端を走り,米国は遅れを取った。しかし,今後は米国が世界の先頭に踊り出ると思う」

Kallasvuo氏のこの発言の背景には,インターネットと携帯端末を融合したアプリケーションが今後のモバイル市場の原動力になるとの主張がある。 1990年代と同様に米国がインターネット市場で世界を牽引し,それを足がかりにして,今後のモバイルとインターネットの融合市場を先導していくだろうと Kallasvuo氏は説明した。

「今後は米国がケータイ市場でリーダーになる」,Nokia社のCEOが指摘 | 日経 xTECH(クロステック)

"The industry as a whole is in the middle of a transformation, and it's a very exciting time,"

"It's moving from a device industry to an experience industry, and we're making a conscious long-term effort to capitalize on that."

the increased interest in using the Internet on mobile devices has been a boon to Nokia.


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まさに、携帯端末業界が過渡期にあり、端末事業が、デバイス産業から経験産業に移り変わりつつある、そういう認識が日本の携帯電話メーカーはじめ、キャリアを含めた業界関係者に共有されているのだろうか。

"The Nokia-Microsoft collaboration to bring corporate mobile e-mail to businesses and mobile professionals is truly unbeatable,"

"We will exceed the RIM client (BlackBerry) in some months with a very good e-mail system."

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ここで言われている"e-mail"とは、日本流のケータイメールのことではなく、あえて回りくどく言うなら”ケータイで利用するPCメール”であることに注意する必要がある。

日本の環境では、素のネットの世界とケータイの世界の間に、ケータイネットの世界というクッションが挟まっていて、ここがまさにキャリアが囲い込んだ”柵付きの庭”なのだ*1

しかし、NOKIAのCEOの発言から理解されるのは、ケータイの世界と素のネットの世界が、囲い込みの”庭”抜きに直結されて融合していくという近未来、あるいは既に現実化しつつある世界である。

言い換えれば、携帯電話端末が”PCと同じ”インターネットの世界への入り口になり、そこで、PCユーザーにとってすでに標準となっているサービス(webであれメールであれ)が、携帯電話でも、ということ。それが、”モバイルとインターネットの融合市場”の意味合いなのだ。携帯端末が、「通信手段内蔵の小型PC」というのが言いすぎなら、小型インターネットデバイスになるということである。

これは、ネットの側からみれば、PCが前提だった”クライアント”が、携帯端末やMIDをもとり込む、将来的にはむしろそちらが中心になる、ということを意味している。これは、小さくない変化だ。web3.0と言ってもよいのかもしれない。

そういう時代の携帯端末は、モバイルパソコンと競合する製品になる。そういう認識になれば、自ずと、どのような機能を装備し、何にフォーカスした端末を作るのか、というコンセプトも、これまでとは異なってくるし、NOKIAの端末は、そういう現状認識あるいは将来予測のもとに生み出されていくということである。

日本の端末は、どうですか?

*1:奇しくも、日本のあるキャリアの広告では”庭”という表現が使われていることが象徴的である。