初代iPhone発表から2年、そして次の2年

各キャリアの冬商戦向け端末が、そろそろ出揃ってきた。まだ手に取って触れていないものもあるが、それも含めて、特にドコモのラインナップをみて感じたことは、初代iPhone発表から2年が経ったということ、つまりiPhoneの影響が端末上に見られるようになった、ということである。

もっとも分かりやすいのは、タッチパネルの採用だろう。SHだけは先行してタッチパネル採用の端末を出していたが、これはiPhone用のタッチパネルの供給元といわれる同社が、当然先に情報をつかんでいたことの反映なのかもしれない。今回の冬商戦の端末では、SH以外の他社も含めて複数のメーカーがタッチパネルを採用してきた。

また、ウィジェットの採用も、iPhoneの影響ではないかと感じている。iPhoneは、言ってみればウィジェットの集合で構成されている端末。ドコモ端末ではデフォルト画面は待ち受けで、ボタンを押さないとウィジェットは表示されないというあたりに、いきなりウィジェットが並んだホーム画面が表示されるiPhoneとの考え方の違い、今までの端末との連続性を感じるが、ともあれ、iPhoneが”app”と呼ばれるウィジェット群の存在によって幅広いユーザーニーズに応える端末となるポテンシャルを持つことに、和式ケータイも近づいた、と評価できるだろう。もちろん、今後どれだけ幅広く、また質の高いウィジェットが供給されるのか、その仕組みをドコモをはじめとしてキャリア側が作れるかどうかに成否がかかっていることは言うまでもない。

こうしてみると、一般論として携帯端末の開発には2年かかる、と言われることの具体例を示されたような気がしてくる。初代iPhoneが発表されたのが2007年初頭のMacWorldであったから、それからそろそろ丸2年。各メーカーの開発関係者が発表直後から様々に情報を集め、検討を繰り返してきた結果が、2年弱の時を経て形になったものが、最新の端末だと理解してよいのだろう。

一方で、iPhoneの影響をなんら感じさせない端末もある。これは、もちろんiPhoneについて検討した結果、タッチパネルをはじめとする特徴を自社端末に採用するに値しないという判断に基づいて見送ったメーカーもあると思う。それはそれでよい。それは各社のポリシーや考え方の違いにすぎないと言ってしまえばそれだけのことだ。

しかし、もし、iPhoneインパクトを発表当初に理解できずに、出遅れて開発がこの冬商戦に間に合わなかった、というメーカーがあるとすれば、それは問題だろう。ポリシーの問題なのか、出遅れなのかは、来年の夏商戦以降の端末がどのような仕立てで出てくるかを見ると、うっすら想像がつくのかもしれない。

済んでしまったことはともかくとして、2年後の2010年末に我々の目の前にどのような端末が並んでいるかは、2008年末の今、各社の開発担当者および意思決定者の頭の中にある情報と判断によって、すでに大筋は決まってしまっている、ということを改めて意識しておきたい。

WiMAX、次世代PHS、そしてLTEと、技術的な面だけを考えても、この先2年の間に起こるであろうと予測される通信業界の変化は、過去2年の変化とは比べものにならないほど大きい。だれもが2年後のことなど見通せない、と言ってしまってもいいだろう。

だからこそ、せめて、今すでに明らかになっていることだけは、最低限見て知って感じておくべきだ。iPhoneの発表に素早く反応できずに出遅れたと心の中で感じている開発者の方がもしもいるのなら、その反省を活かして、2年後、ユーザーの心がときめくような端末を作って欲しいと思う。

9月に始まったアメリカのWiMAXの商用サービスは視察に行きましたか?Android搭載のG1は使ってみましたか?多分に感覚的な部分が評価を左右する携帯端末の開発に生かすには、ネットの情報だけでは不十分で、体感することがとても重要なはず。お金の問題もあるけれど、少なくても、そういう体感をしにいく時間と距離の問題を克服することは出来るはず。そのための強い味方が携帯電話じゃないですか。そういう使い方を開発者自身がすることが、ユーザーの支持と共感を得られるものづくりの原点になるはずだと思う。