”第2の黒船”アンドロイド搭載ケータイ来航の想定シナリオ

8/14付のニューヨークタイムスが伝えたところによると、アンドロイド(Android)搭載ケータイのデビュー機はHTC製で、T-mobile USAからこの年末にも発売されるかもしれない、という。

T-Mobile to Offer First Phone With Google Software

いよいよ、”黒船2号”の建造が終わって、あとは日本への来航がいつになるのか、ということになりそうだ。

今後、このアンドロイドがどのように日本に入ってくるのか、公式にオープンになっている情報をもとに想定を試みてみたい。

まず、Android搭載ケータイの推進団体であるOHA(Open Handset Alliance)に加盟している日本のキャリアメンバーは、NTTdocomoとau/KDDIの2社。SoftBankモバイルは加盟していない。したがってdocomoauSoftBankより先に導入すると考えるのが順当であろう。

また、端末メーカーでOHAに参加している日本企業はゼロで、海外企業だと、HTC、SAMSUNG、LG、Motorola。このうち、現在auに端末を供給しているメーカーは、現時点のauのwebサイトをみたところではゼロ。docomoは、HTC、LG製の端末が現行機種にある。Motorola製は数年前にあったが、現行機種はゼロ。

以上の2点と、HTC製が年内にも発売開始ということから考えると、HTC+docomoの組み合わせが、もっとも早く日本に”来航”する可能性があるアンドロイド搭載機、ということになるだろうか。T-mobileUSAに納入ということから考えて、このHTC製はW-CDMA対応機と考えられることも、docomoの導入が容易になると思われる。

au/KDDIについては、果たしていつCDMA2000 1x EV-DO (CDMA 1X WIN)対応の端末がどのメーカーから出てくるのかが、導入時期を決めることになると思われるが、こちらについては、まだ具体的な見通しはないようだ。冒頭の記事では、

The chip maker Qualcomm, another member of the alliance, said the company was working on Android phones with more than five phone manufacturers.
(OHAメンバーであるチップメーカーのクアルコム社は、5社以上の端末メーカーとアンドロイド端末の開発をしていると述べた。)

と書かれており、auが採用しているCDMA2000方式の端末も開発されていないわけではないものの、具体的なスケジュールはまだ発表できない段階のようであり、OHAに参加している端末メーカーとの現時点の納入関係がないことも含めて、docomoに比べ導入が遅くなる可能性は高そうだ。

ただここで、docomoには、iPhone3Gを導入するという選択肢が残されている可能性もあることは、考慮しておきたい。都市部のFOMAは2GHz帯のカバーが薄く、日本で使われている周波数だと2GHz帯を使うことになるiPhonedocomoは導入しにくいという指摘もあるが、この点は、Android搭載機の対応周波数との兼ね合いということになるのだろう。また、Android搭載機とiPhoneとの価格を比べて、安い方が導入しやすくなる、という点もポイントになるだろう。同じようなスペックであるとすれば、あまり大きな価格差は出ず、むしろ世界70か国で同一機種を発売するiPhoneの方が、価格性能比では安い可能性もあるかと思われる。

auに関しては、iPhoneW-CDMA機であるため技術的に採用ができないことと、CDMA200O対応のAndroid機登場がW-CDMA機より遅れそうなことで、不利といえば不利な状況かもしれない。

ただ、以前のエントリに書いた仮説が正しいとするならば、iPhone拒絶層の支持が厚いauは、他社のiPhoneAndroid導入に大きな影響は受けず、むしろ他の2社がこうした端末を導入し、拒絶層の反応が和らいだところでAndroid機を導入すれば、現顧客層の流失を最小限に抑えながらAndroid機を顧客に受け入れてもらえるかもしれない。そのシナリオを描くには、最適なタイミングでAndroid機を投入できるように準備しておくことがポイントになるだろう。いずれにしても、今の加入者を維持しつつ、来るべきチャンスに備えるという微妙な舵取りが要求されそうだ。

最後に、SoftBankモバイルがAndroid機を投入することはあるだろうか。これは推測の域を出ないが、OHAメンバーではないキャリアが導入することにはメンバーキャリアからの反対・反発が予想されること、上に書いたようにiPhoneよりもコストパフォーマンスに優れた端末が初期段階で出てくるか微妙であることなどから、当面は導入されないのではないだろうか。そのかわり、SAMSUNGOMNIAなどは、積極的に導入を図っていく可能性が高いと思われる。

もちろん、Androidに対応するアプリの量と質の問題など、まだ未知数の要素によって結果はいかようにも変わる可能性がある。その時点その時点で明らかになっている要素を加味して、想定シナリオを修正していく必要があり、その分非常に難しい経営判断を求められることになると思うが、逆にいえば各社がどこでどのように自分に有利なシナリオを描くのか、注意深く見守っていきたい。