iPhoneが変えたもの=「常時」接続の定義

iPhoneの登場で何が変わったかと言われれば、そのひとつは「常時接続」の定義が変わった、ということだと思う。

これまで、パソコン自体はADSLや光で常時接続されていても、肝心の自分が常時接続されていたわけではなかった。またケータイは、考えてみればすでに常時接続ではあったけれども、出来ることが限られていたり、出来たとしても非常に難しくて、少なくても自分には常時接続のデバイスというよりも、電話+αの便利な道具だった。

それがiPhoneによって非常に簡単に、事実上ほぼ字義通り「常時」接続になった、と感じている。

メールだけなら、これまでのケータイでも不便はあまり感じないが、スケジュール(カレンダー)やアドレス帳(電話帳)を同期させると、この「常時」の違いが身に沁みてくる。

自宅でスリープ状態になっているパソコンとiPhoneとの間で一定時間ごとにスケジュールやアドレス帳の内容を最新のものに同期してくれるので、手帳を持っていない時でも予定を入れることが出来るようになったし、手帳やケータイの紛失などでデータを完全に失うリスクもほぼなくなった。Googleカレンダーとも同期させているので、会社や出先のパソコンからも予定をコントロールできる。スケジュール管理は手帳以外考えられないと数ヶ月前まで思っていた自分に、今の自分が驚いている。

もうひとつ気がついたのは、スケジュール=未来の予定を、現実に起きたことに書き換えていくことで、日記とまでは言わないが行動記録=ライフログを簡単に取ることが出来るようになったということ。これで、容量が許す限り、何年分でも好きなだけ過去の記録を、手元のiPhoneで手軽にさかのぼることが出来る。もちろん、自分のパソコンにはバックアップがある。

こうしたライフログを、iPhoneを通じて世界中の人と写真でシェアしようという試みがある。
Big Canvas PhotoShareという無料サービスで、iPhoneにApp(ソフトウェア)を入れて、あとは撮った写真をワンタッチでアップロードする、というだけの簡単な仕組み。

作ったのは、マイクロソフトで活躍し、「おもてなしの経営学 /アップルがソニーを超えた理由」の著者でもある中島聡さん。このサービスの哲学にも非常に納得したし、なにより実際に使ってみて、楽しい。

私は、写真によるライフログと考えて、つまらない写真でも毎日1枚シェアしていくことを目標にしているのだが、半年とか1年経ったときに自分のログを見返したとき、どんなことを思うのか興味があるし、またそういう自分のログが、日本を含む世界の見知らぬ人々のログと、ある日はシンクロしたり、あるいはまったく隔絶したりしながら存在していることを感じてなんだかとても楽しいし、世界の奥行きを事実垣間見ているのだと思うと、不思議な気分になる。写真は言語に依存しないから、一切言語を使わないで利用することも可能だし、気が向いたら撮影者とコメントを交わすことも出来るのも、よく出来ていると思う。

同期されるカレンダーとPhotoShareに残っていく日々の写真が、私の日々のライフログであり、ほぼ本当の意味で「常時接続」になった初めてのデバイスであるiPhoneが、私にもたらした大きな変化のひとつ。ようやく芽吹いた「ユビキタス」の最初の姿が、ここにある気がする。