100円PCは安いか?iPhone/ケータイ端末の値段は高いか?

総務省のモバイル研究会の”成果”ということか、昨年から携帯端末の販売奨励金が廃止され、最新の高機能端末だと5万円前後の価格で販売されるようになった。そのせいか、ここにきて端末の販売は昨年比10%単位で減少しており、原因が販売奨励金廃止にあるのだとすれば、”官製不況”ということになるのかもしれない。

一方で、100円PCが話題になっている。イーモバイルとの2年契約を条件に、市販価格で5万円弱のPCを100円で買える、というものだ。

このやり方は、かつて0円とか1円でケータイを売っていた頃のやり方と、基本的な考え方は同じである。

つまり単純化すると、

トータルの支払い額(A)=端末価格(B)+契約期間の通信料合計(C)

の式で、Aの額が変わらないように、BとCの比率を変えているだけのことだ。Bを減らしたいと思えば、その分をCに上乗せする必要がある。ビジネスのことを考えれば、非常に当たり前の話である。

100円PCの場合、

 実はこのプラン、長期契約の束縛がない同条件のプランに比べて、月額で1,900円高くなっている。つまり購入時の値引き分のうち1,900×24=4万5,600円は、毎月の利用料金で相殺されることになる。

http://news.livedoor.com/article/detail/3815480/

とあるように、Bをほとんどゼロ(100円)にするかわりに、その分Cが増えている。

実際には、買ったけれども使わずに放置する人なども一定の割合で発生するし(そうすれば通信料分はキャリアは何もせずに収入が入ることになる)、大量に仕入れる分PC自体を少しは安く調達できるのだろうから、その分は、ちゃんと使い続ける人には若干オトクになるような計算になっているけれど、その額はそれほど大きくない。この100円PCのケースでは、ざっと言って、通信料の上乗せ分45,600円と、同じPCの店頭価格との差+イーモバイルの端末価格が正味の割引分といえるだろう。

このシンプルな「A=B+C」という図式がわかっていれば、iPhoneの値段のからくりも理解できる。8GBで199ドル、日本では2万いくら、ということだが、この数字は、式のBしか言っていない。
着目すべきはAの数字で、すごく大ざっぱに言って、2年で20万円(これが式のAの値)をソフトバンクモバイルに支払うということ。

やはり大ざっぱに推測すると、ソフト開発費用などのコストも、アップルの利益分などもすべて含めて*1考えて、端末代金は8万円(B)、2年間のデータ通信料(通話は別)が12万円(C)と考えれば、当たらずといえども遠からず、という線だと思う。

B=8万円は、100円PCで使われているようないわゆるUMPCよりは高いが、ちょっとしたノートPCよりもかなり安い値段。iPhoneでできることと、携帯性などを考えると、ハードの価格として妥当な線かと思う。

Cは、月額に直して5000円。これは、新聞の購読料より少し高いくらい。

これを、安いと思うか高いと思うかは、それぞれの感じ方があると思う。私個人の感覚としては、高くもなく安くもない妥当な値段だし、何よりそういう経験を、他の物価との比較で妥当な値段でえられるのだから、大きくみればこれは安い、という判断でiPhoneを購入したのだった。

販売奨励金の有無で、これだけ端末の売れ行きが変化してしまうのだとすれば、このA=B+Cが理解されていない、ということとともに、これまでの端末の需要は水ぶくれであり、今の台数が正味なのだ、ということでもあると思う。その点でイーモバイルにとっての100円PCの効果も、一過性かもしれない。

*1:余談ながらiPhone端末の原価計算の件が話題になり、それをもとにアップルはボッている、というような論調がみられたことがあるが、経済を知らなさすぎるというべきだろう。そういう人は、自分の給料がどのような仕組みでもらえているかをよく考え直すか、あるいは文句を言わずにタダ働きをするかの、どちらかしかないのではないか。