iPhoneの容量を拡張する方法(容量の大小の意味合いを考える)

昨年の秋にiPod touchを買ったときから考えていたことなのだが、iPhoneiPod touchも、長い目でみると容量はそれほど増えていかないんだろうし、その必要も薄れていくのではないだろうか。

どうしても従来のPCのハードディスク容量を見る時と同じような気持ちになってしまって、16GBでも少ないんじゃないかとか、64GBはいつ出るんだろうとか、そんな考え方になってしまいがちだ。

しかし、忘れてはいけないのは、iPhoneにせよiPod touch*1にせよ、クラウドの存在を前提として(素直にアップルのセールストークに従うなら、MobileMeサービスの利用を前提として)作られた端末であり、常時オンラインが可能であることを前提に、かなりの極論をすれば、iPhone側にデータを置く必要はない、ということなのだ。

とはいえ実際には、常にオンライン(圏内ないしはWiFiエリア内)であるというわけにはいかないし、オンラインであっても通信スピードの問題があるから、一定のデータについてはiPhone側においておく必要がある。

だが、そういうデータが果たしてどのくらいの量になるのか、ということなのだ。もちろん、個人差はあるし、iPhoneをどのような目的で、どのような環境で使うか、ということにも大きく左右されるので、一概に何GBあればOK、という言い方は難しい。

しかし、本当にそのデータは手元(本体)においておかなければならないものか、ということをひとつひとつ検証していくなら、実は本体に置く必要性がない、あるいは置いておかない方がよい、というものも案外沢山あるはずだ。

典型的なのは、メールのデータだろう。かつて主流だったPOPの場合、メールのデータを手元の機器(クライアント)で見るということは、メールのデータ自体がサーバーからクライアントに移されることを意味していたから、クライアント側の容量が一杯になってしまえば、古いメールを削除しなければ新しいメールを受け取ることができない。したがって、クライアント側の容量は、大きければ大きいほど望ましかった。

一方、iPhoneが採用するIMAPは、サーバーのメールデータを読み出してiPhoneに表示するが、データ自体はサーバーに残したままだから、クライアント側の容量を気にする必要がない。MobileMeに契約すれば20GBの容量が割り当てられるが、仮にそのすべてをメールのデータで使ったとしても、手元の8GBのiPhoneから、20GB分のメールのデータを参照することが可能、ということになる。

そして、IMAPのようにクライアント側にデータを移してしまわないことで、複数の端末からアクセスでき、既読や未読のステータスも常に最新の状態に保たれるので、POPよりも使い勝手がよい。

メールに限らず、複数のメンバーがアクセスして利用する可能性のあるデーターなどは、クラウドに置いてクライアントには置かない方がよいし、セキュリティが問題となるデータも、端末にデータ自体が残らないようにすることがポイントになってくる。

そうすると、クライアントであるiPhone側に置かなければならないデータは減少するから、その分容量が少なくても構わなくなるはずである。

これまで、何でもハードディスクに放り込んできた習慣と発想を意識的に変えなければいけないから、慣れるまでが少々大変かもしれないが、何でも手元においておくというのは、web1.0的な発想と言えるのかもしれない。

実際に、このような方向でiPhone向けに提供されているサービスは、MobileMe以外にも多数出てきている。例えばdorpboxのサービスを使えば無料でクラウド側に2GBの容量を確保することができる。8GBのiPhoneならこれで実質10GBとして使える、ということなのだ。このほかにも、容量の大小はさまざまだが、Evernote、Zenbe Listなど、実質的にiPhoneの容量を増やす働きをするサービスは既に多数ある。

このようにして本体に置かなくてすむデータが増えれば、実質的に本体側の容量が増えたことと同じこと。たとえば、これまでのケータイであれば、アドレス帳ひとつをとっても、500件〜1000件程度までしか本体に登録できないものが普通であった。わざわざ、それを回避する裏技といったブログの記事も見受けられるが、iPhoneであればまずそういう心配もない。

以前のエントリーで、iPhoneを使ってしまう理由として、クラウドとの連携が前提であることを挙げたが、具体的には、こういった部分で差が現れてくるのだ。

将来は、オンラインを維持する環境が今よりも整備されてくるだろうから、アプリ以外のユーザーデータの大半はクラウド側に置かれることになる可能性だってあるかもしれない。たとえばiPodに入っている音楽データすらもクラウド側に置いてしまって、手元には今流れている曲に加えて、次の曲数曲分のデータだけをキャッシュしておけばよい、ということになるのかもしれない。新しいiPod classicの容量が前モデルよりも減少したというのは、そんな動きを示唆するものなのだろうか、とも思えてくる。

つまり、キャッシュとして必要な容量さえ確保されていれば、あとはごく最小限のデータが手元に置かれればよいということになって、iPhoneの容量によるバリエーションは将来的に消滅してしまうことになるのかもしれない。

*1:以下、このエントリーでは特にiPhoneiPod touchを区別する必要がないので、2つを代表させてiPhoneと書く。