ソフトバンクの新製品発表と「iPhoneに対する新しい取り組み」

ソフトバンクが新製品発表会を実施し、昨日孫社長が発表すると言っていた「iPhoneに対する新しい取り組み」の内容も明らかになった。

2008年 | プレスリリース | 企業・IR | ソフトバンク

■新端末は、スマートフォンシフトが鮮明に

リリースの冒頭に”新たに16機種の携帯電話機を投入”と書いてあるが、一覧表をカウントすると15機種しかない。既発売の2機種とUSB通信端末を除いた残り12機種のうち、5機種はいわゆるスマートフォンで、2008年をケータイのインターネットマシン化元年にするという、孫社長の発言を形にしたラインナップ、といえるだろう。かねて噂されていたSAMSUNGOMNIAも、この5機種の中に入っている。

■「iPhoneに対する新しい取り組み」

これだけスマートフォンのラインナップが強化され、実際に売れたとしたら、それでなくても不安なソフトバンクの帯域・通信スピードがどうなるのか気になるが、iPhoneからのBBモバイルポイント利用の無料化を打ち出して、データトラフィックの分散を図ってきた。これが「iPhoneに対する新しい取り組み」のひとつ。BBモバイルポイント利用を促進させるというところまでは昨日のエントリーに書いた予想が当たったが、無料開放にまで踏み切るというのは、予想を外れた。孫さんが太っ腹とみるか、そのくらい帯域が切羽詰った状況だと見るか。ともあれ、タダならかなりのiPhoneユーザーが利用するだろう。自分のことを考えても、ちょっとどこかで休憩するなら、BBモバイルポイントがある場所を選ぶ可能性は高い。

iPhoneに対する新しい取り組み」のもうひとつの目玉は、iPhone 3G用充電・ワンセグチューナー「TV&バッテリー」。まだ実機を使ったわけではないので何ともいえない部分はあるが、ワンセグの問題とバッテリーの問題に、ひとつの周辺機器で対応したことは評価できそうだ。これで、app(ソフト)としてワンセグ録画もできるようになれば、利便性は高いかもしれない。

興味があるのは、「TV&バッテリー」はWiFiを使って映像をiPhoneに送る仕様になっているようだが、この電波を複数のiPhoneで同時視聴できるのか、またiPod touchでも受けられるのか、ということ。それが可能なら、1対1で対応させて使うのとは別な使い方も考えられそうだ。*1

絵文字対応についても触れられたようだが、これはおそらくiPhone OS 2.2でアップルが対応することになるのだろう。


■マスコミの論調はどうなっていくか

今日のソフトバンクの新製品発表がある以前に、昨日このようなタイトルの記事が出ている。

新モデル発表会で分かった、「ケータイの呪縛」から逃れられないau - 日経トレンディネット

7月のiPhoneの登場や、現行携帯の”目に見える変化”の一段落をうけて、マスコミの記者の目には、これまでの携帯電話の延長線上にある端末は”「ケータイの呪縛」から逃れられ”ていないと見えるようになってきたのではないだろうか。今日のソフトバンクスマートフォン攻勢が、さらにそういった”気分”に拍車をかけそうだし、この後に控えるドコモがどのような端末を発表するかによっては、こうした論調、つまり、スマートフォンがこれからの携帯の主流であるかのようなマスコミの論調が決定的になるかもしれない。そうなると、余計にauの出遅れ感が目立つことになる可能性は高い。

実際には、ユーザーの大多数は当面は現行携帯の延長にある新機種を購入し続けるはずであり、スマートフォンへのシフトは緩やかなものだろうとは思われる。しかし、スマートフォンが最先端であるという論調のマスコミの影響は2-30代の男性を中心にして徐々に現れてくるだろうし、現実として新機種のほぼ半分がスマートフォンで占められるソフトバンクの場合、スマートフォンユーザーの比率は高くならざるを得ないだろう。ユーザーがそれを嫌うなら、MNPなどでauやドコモに転出していくのだと思われる。

このような状況では、おそらくiPhone1機種の売れ行きが大々的に取り上げられるということは、この先は少なくなっていくだろうし、むしろ、全キャリアを通じてのスマートフォンのユーザ比率が関心を持たれるようになる可能性は高い。ドコモにしてもブラックベリーやHTCのスマートフォンを積極的に売り始めているので、ソフトバンク1社だけのニュースではなくなるからマスコミも取り上げやすい話題になってくる。auは、来年のスマートフォン導入までしばらくは忍耐を強いられる、ということだろうか。あるいは、予定されているという第3弾の発表で巻き返すのだろうか。

その意味では、多少の紆余曲折はありながら、大きく言えば孫さんの作った流れに、今年後半の日本の携帯電話業界は乗せられたという感じがする。ソフトバンクは、Yahoo!との関係でGoogle主導のアンドロイドからはカヤの外に置かれる可能性も高いので、OHA加盟のドコモやauと違い、今のうちにiPhoneを筆頭としたスマートフォンで先行して体制固めをしておきたいという意図もあっただろう。また、これまでの流れの携帯端末の”頭打ち感”を、スマートフォンをニュースにする好機と捉え、急所を突いた戦略であったとも思える。その点、孫さんらしい展開ということだろうか。

ただ、これはあくまでマスコミの論調の流れであって、本当にユーザーがついてくるのかどうかは、時間をかけて検証する必要がある。iPhoneにしても、発売当初にあれほどマスコミが過熱報道をしたわりにはユーザーは動かなかった、という身近な例を引くまでもない。

■海外メーカーの挟み撃ち

もうひとつ、地味だが気になったのは、プリペイド端末にSAMSUNG製端末(730SC)が投入されたということ。これでSAMSUNGは、OMNIAで最上位ラインと730SCで低価格ライン双方に同時に端末を供給するということになった。今後この”挟み撃ち”が広がったときに、日本のケータイメーカーはどこにポジションを取るのか。今から考えておくべき課題だと思う。そのひとつの回答は、スマートフォンではないながらiPhoneをしのぐ3.8インチ液晶を搭載し、最上位ラインに位置づけられているシャープの931SHだろうか。

*1:10/31追記:「TV&バッテリー」とiPhoneを1対1で対応させる必要があり、複数台の同時視聴はできないらしい。