2009年のケータイ、予測は難しいので展望してみる

あけましておめでとうございます。新年をむかえ、動きの激しい携帯電話の世界のこと、とても予測とまではいかないので、2009年の動きを考えるにあたって、有意義ではないかと思われる展望の視点を3つにまとめて列記しておきたい。

1■3.5G、無線LANWiMAXや次世代PHS、3.9G(LTE)のせめぎ合いの行方

世界を見渡せばようやく3Gサービスがそれなりに行き渡ってきたという感のあるところだが、早ければドコモは来年(2010年)にもLTEをサービス開始するという。また、日本での商用サービスが今年からのWiMAXウィルコムの次世代PHSがどのように受け入れられていくのか、また東海道新幹線等公共交通機関内での無線LANサービス開始など、既存サービスの拡充も新たな展開がみられる。

こうしたサービスの、どれがユーザーに受け入れられるのか。従来のものが受け入れられすぎると新世代に移りにくいし、あまりに先取りしすぎると、それはそれでテイクオフまでが苦しい。そのスピードは、なかなか事業者がコントロールしにくいところだと思うが、これらのサービスのユーザー数がどのように推移していくのか、2009年のユーザーの動きが将来を占うポイントの一つになるだろう。


2■次世代的な携帯端末の姿とは何か

ポイントの1点目で指摘したように、世代をまたがる様々なサービスが混在する2009年において、ユーザーに受け入れられる端末の姿がどのように変わっていくのか、という点も注目する必要がある。

2G→3Gへと移る過程では、それまでモノクロ(単色)かつせいぜい1〜3行程度の文字が表示できれば十分だった端末のディスプレイ部が、カラー化と大型化を果たした。これは2Gと3Gの最も大きな違いが、通話だけでなくデータ通信が加わったことによる必然的な変化であった。では、4Gを目前に控えて、端末はどのようにかわっていくのだろうか。順当にいけば、通話が主というよりもデータ通信が主というユーザーが増えるなかで、いっそうデータ通信に適したスタイルの端末になっていくと考えられる。これまでスマートフォンと呼ばれていた一群の端末は、こうした3Gから次世代への過渡期において出現している端末の姿であるとも言えるだろう。

2007年に初代が登場したiPhoneは、こうしたスマートフォンよりも、一歩次の姿に近づいたものであると考えてもよいのではないかと思うし、いわゆるグーグルフォン(Android搭載のハイエンド機)も、こうした流れで生まれてきているものと位置づけてよいのではないだろうか。

もちろん、通話を主体に使うユーザーも引き続き多数存在するだろうし、また加入者が頭打ちとなっている先進諸国においては、TPOに合わせて複数の端末を、通話用、通信用と使い分けるといった方向にユーザー側も事業者・端末メーカー側も動く可能性が高いと思う。例えば、通話用の本機があり、そこから何らかの無線方式によって使用できる、オプション子機としてのデータ通信用端末、といった形態も考えられるかもしれない。

いずれにしても、高速大容量のデータを使った次世代サービスを前提とする端末の姿が徐々に見えてくるだろうし、それを見いださなければならないだろう。おそらくそれは、通話用端末をベースに発展してきた、2Gをひきずった3G機の姿とは、かなり様相を異にするものになるように思われる。


3■経済動向とユーザー動向の関係

世界的な不況によって、一般論として言えば携帯電話業界も事業者、端末メーカーともに厳しい1年となりそうだ。ただ、こうした経済状況だからこその変化とチャンスも生まれてくる可能性がある。

昨年末から、アメリカの安売り大手であるWal-MartiPhoneの販売を始めた。これまでのAppleの定めた”定価”とくらべて、わずかに数ドル安い程度で必ずしもディスカウントされているとは言いがたいが、以前のエントリーでも紹介したように、必ずしも高所得者層だけがiPhoneを買っているわけではなく、むしろ中〜中の下の所得層がiPhoneを買うという現象が起きている。おそらく、携帯とネット環境(PC+ブロードバンド)をひとまとめにiPhoneで手にしてしまえば安上がり、ということなのだろう。

これまで、いわゆるスマートフォンはビジネスユーザー、とりわけ金融など、どちらかというと高所得層のビジネスパーソンのもの、という認識であったものが、iPhoneユーザビリティの高さも手伝って、むしろ平均以下の所得層がユーザーの中心となる可能性すらある。

日本で考えても、先行発売が始まったソフトバンクワンセグチューナーつきバッテリー「TV&バッテリー」のアクセサリーも含めてiPhoneを購入すれば、「ケータイ+テレビ+パソコン+ブロードバンド接続」の個別の契約・購入のかわりになると考える学生や単身者が出てくる可能性はある。

その意味で、潜在的な競合商品として、小型テレビ、低価格PC(ネットブックなど)、ブロードバンド接続サービスの動向も、少なくても脇目で追いかけておく必要がありそうだ。また、競合ではなく、端末とあわせて使うものとして、中型〜大型のTV、高機能PC等のハード、あるいはGoogleなどソフト・サービス事業者が、端末とどのように連携させて使うことを提案してくるかも注意してみておく必要があるだろう。

まもなく開催されるラスベガスでのCES、また2月のバルセロナでのMobile World Congressでは、2009年の業界動向を示唆する展示が行われると思われる。これらについても、以上のような視点から分析して、このブログでも取り上げていきたいと思う。

最後になりましたが、今年もよろしくお願いします。