iPhone用TV&バッテリーが示唆する、携帯端末のあり方

以前のエントリーでも触れた、昨年10月に発表され、年内(2008年)発売ということであったiPhone用のワンセグチューナー+充電池「TV&バッテリー」が、一部のソフトバンクショップ限定でこの年末年始から買えるようになった。全国のソフトバンクショップでの展開は今月の半ば以降ということらしい。おそらく、詳しい試用レポートは他のニュースサイトやブログでも随時アップされていくと思うのと、私もまだ昨日購入したばかりで*1十分には使い込めていないので、ここではTV&バッテリーを使いながら気づいたことを中心に書いてみたい。


写真上のiPhone本体よりも、TV&バッテリーは2回りほど小さく、重さも80gと軽い。


このTV&バッテリーは、ソフトバンクモバイルの、いわば苦肉の策として登場したものであるとみることができる。ワンセグ搭載とバッテリー交換が簡単なのが当たり前、という日本の携帯端末市場で、この2つのポイントを満たさないiPhoneを何とか日本のユーザーに受け入れてもらおうということで考えられたアイディアであると思われる。

しかし考えてみれば、そもそもの端末の仕立てとして、最初からこういう構成の仕方もあるのではないだろうか。メインの本体には、シンブルな機能だけに絞って搭載し、このTV&バッテリーのような対応周辺機器を買っていくことで機能を増やせるといった柔軟性を持たせておけば、一見同じ本体を使っていても、その人にあわせて様々なバリエーションの”中身”が提供可能、ということになる。そうなれば、搭載機能ごとに端末を作り分ける必要性も低くなり、結果としてコストダウンも図れるだろう。また、異なる国や地域にあわせて端末を供給する場合でも、本体は同一で、周辺機器を変えれば対応できる、といったことも、ある程度までは可能になるのではないだろうか。iPhoneの本体は各国共通で、日本向けの周辺機器としてTV&バッテリーがある、という考え方である。

噂では、Felica機能をSIMカード自体に搭載できないか、という検討もソフトバンクモバイルで行われている、という話もあるそうだ。もしこれが実現するなら、iPhoneなど本体にFelicaを内蔵していない端末でも、いわゆる”おサイフケータイ”の諸機能が利用できることになる。その実現性については私には分からないが、このような柔軟な発想で端末の作り方をとらえ直すことは、今後の端末のあり方を考える上で、少なくても思考実験として、一度考えてみる価値はあるのではないだろか。

ちなみに、このTV&バッテリーは韓国のicube社製。Appleが作ったものではないから、電源ボタンの作りと位置が誤ってONになってしまいそうであったり、ワンセグ視聴時の電池の消耗が思ったよりも進むことなど、使い勝手の点ではどうかと思う部分も、使い始めて1日にして思うところがあり、アラがないわけではない。おそらく、他の試用レポートなどではそういった点が列挙されるのではないかと思う。もちろん、それはそれで事実であり、買うのであれば、そういった点も踏まえて購入しなければならないとは思う。*2

ただ、そこに目を奪われて、このTV&バッテリーが示唆する発想の転換や、新たな端末の作り方の可能性までも見落としてしまうともったいない。

アラの部分については、このようなサードパーティー製の周辺機器だけでなはく、端末本体のメーカーが純正の周辺機器も提供するようになれば、より洗練された製品が供給される可能性も高いし、こうした市場自体が活性化することにもつながり、流行り言葉でいえば、携帯電話本体を取り巻く”エコシステム”が出来てくる可能性もある*3

むしろ、Appleが完璧なまでに作り込んだiPhoneに、こうした周辺機器を登場させる余地があるということや、それを可能にしているiPhoneの柔軟性(App storeの存在)に注目すべきであると思う。


*1:ソフトバンク表参道で、9,840円で購入

*2:評価できる点も触れておかなければ不公平であろう。TV&バッテリー本体の充電用ケーブルは、付属するが標準のUSB A-Bタイプなので、手持ちケーブルの流用も可能。TV&バッテリーの充電(入力)側がUBS-Bコネクター、出力(iPhone充電)側がUSB-Aコネクタになっているので、上にリンクしておいたようなUSB対応の出力5V/1AのACアダプターなら直接接続して充電可能である。余談だがAndroid Dev Phone1付属のACアダプターがこの規格で、そのまま充電に使えた。

*3:もちろん、その前提として端末本体の販売台数=マーケットの規模が必要になるが