プリペイドSIMで、お手頃価格の海外モバイルネットを使う方法

過去のエントリーでも断片的に触れてきたが(アメリカ篇スペイン/イギリス篇)、SIMロックフリー(SIMアンロック)の端末に、旅先で購入するプリペイドSIMカードを刺して、モバイルでネットを使うことがこれほど便利なものとは思っていなかった。


手元にあるSIMカード


特に、メールやwebはもちろんのこと、グーグルマップやストリートビュー、そしてTwitterのクライアントアプリを使いながらの旅は、これまでと全く違うといってもいい”景色”が見えてくる。しかも、日本のキャリアのSIMカードを国際ローミング使用するのとは比べ物にならないほど、手頃な価格でモバイルネットを使える国も少なくない。ローミングより価格が手頃なだけでなく、プリペイドなので、知らないうちに高額な利用料金になるという心配がないため、安心してモバイルネットを利用できるというメリットは大きい。

海外で携帯電話を通話に利用することは、ここしばらくの間に日本人の間でも急速に一般的になったと思うが、言葉の問題もあって、勤務先や自宅にかけたり、同行者同士の連絡を取ったりするという使い方がほとんどではないかと思う。

一方、モバイルでネットがリーズナブルな値段で使えるなら、現地語での会話は難しい人でも、単語を自分のペースで拾い読みしながらwebを見てもいいし、地図やストリートビューなど、言語に依存しない方法で現地の情報をその場で入手することも可能になる。もちろん、日本語のサイトで旅行先の情報を収集するにも便利だ。そう考えると、旅行者にとって本当に必要性が高いのは、通話ではなくモバイルネットなのだ、ということに気づく。

とはいえ、まだ日本ではSIMロックフリーの端末が一般的ではないし、海外でSIMを買うにもどうやっていいか分からない人が多いのではないかと思うので、限られた範囲ながら自分自身で試した経験をまとめて、参考にして頂けるようにしたいと思う。


■準備するもの

  1. SIMロックフリーの携帯電話端末(スマートフォンなど、モバイルネット可能なもの)+取扱説明書
  2. ・現地で利用するキャリアのプリペイドSIM情報(取り扱い有無、料金プランなど)
  3. ・利用するキャリアのAPN(Access Point Name)情報*1

とりあえず、旅に出る前に上記の3つがあれば、渡航先でSIMを購入してモバイルからネットを使うことが可能だ。

携帯電話端末は、少し値段は高いけれど、iPhone 3GAndroid G1などのSIMロックフリー版が入手できるとベスト。これらの端末なら、ストリートビューGoogleマップといったGoogleのサービスを利用しやすい。日本であらかじめ購入して持っていくのが現地での時間の節約になると思うが、値段や入手のしやすさでメリットがある場合は現地で買うことも考えられる。その場合は、日本出発前に販売店の所在地や電話番号・営業時間などを調べておくとよい。

注意したいのは、もともとSIMロックフリーで出荷された端末と、ロックされていたものを後からロック解除して売られているものとがあること。慣れないうちは、できれば出荷時からSIMロックフリーの端末を入手する方が安心だと思う。また、利用する端末が、日本語と渡航先言語の表示(受信)・入力(送信)に対応しているか、あるいは購入後に対応させることが可能かどうかも、予め確認したうえで購入したい。

また、端末が対応している通信方式にも注意が必要だ。非常に大ざっぱな言い方になるが、日本で主流の3Gと同じ方式が使えるのは、まだ欧米の主要都市圏に限られている。韓国と北米ではCDMAが中心、欧州・南米・アジア・アフリカではGSMが中心で、さらに使用されている周波数もいくつかある。渡航先の通信方式と周波数に自分の端末が対応しているか、事前に確認しておきたい*2。通信方式とカバーエリアについては、利用したいキャリアのwebサイトを見れば情報が出ていることが多い。

さらに、現地にどんなキャリアがあり、プリペイドSIMの取扱いがあるか、ある場合の料金プランや、取扱店の所在地、端末に設定しなければならないAPN情報は、下記のサイトなど、ネットを検索して予め調べておく。ネットの情報が古い場合もあるので、いくつかの情報源を突き合わせておくと安心だ*3

各国のキャリアの情報については、完全には網羅されてはいないが、下記のサイトは比較的よくまとまっていると思う。(いずれも英語サイト)

プリペイドSIM情報全般
http://prepaid-wireless-internet-access.wetpaint.com/

APN情報
http://www.modmygphone.com/wiki/index.php/Carrier_APN_Settings


また、利用する予定のキャリアのwebページで、あらかじめプリペイドSIMの情報をみておき、言語の問題があると予想される場合は該当ページをプリンしておく。それを渡せば、言葉が通じなくても自分が購入したいSIMカードや料金のプランを理解してもらえるようにしておくと現地での購入がスムーズになると思う。キャリアによってはその国の言葉のサイトだけで、英語のサイトすらない場合がある。私自身、スペインのモビスター(テレフォニカ)もスペイン語のサイトしかなかったので、スペインに出発する前に、自分が購入したいSIMと料金プランをweb翻訳しながら探し出して、該当ページのプリントを持参した。


■現地でのSIM購入

店頭に持参するとよいものは、下記のとおり。

  1. ・端末+取扱説明書
  2. ・クレジットカード
  3. ・パスポート
  4. ・購入希望商品/プランのプリントアウト
  5. ・滞在先ホテルの住所・電話番号

上記のすべてが必要になるとは限らないが、無駄足を避けるためにもこれらをすべて持参することがおすすめだ。

クレジットカードは、店頭で登録してくれる場合は、あとから自分で登録しなくても携帯電話から指定された番号にダイヤルして操作するだけで追加のチャージが可能になるので、可能なら登録してしまうとよい。もちろん、店頭の支払いだけなら現金でも大丈夫。

パスポートをチェックされるか、滞在先(ホテル)の情報を聞かれるかどうかは、国とキャリアによりさまざまだった。パスポートのチェックも、見せればよいだけのところからコピーをとられるところまで、対応はまちまちだ。また、居住者でないとSIMを購入できない国やキャリアもあるらしいので、その意味でも事前情報の収集は大切だ。

大まかに言って、SIMカード自体の価格とチャージ金額が別々になっている場合と、初回チャージ金額にカードの値段が含まれている場合とがある。また、初回のチャージ額が予め設定されている場合と、自分の希望額をチャージできる場合がある。

購入自体は簡単だが、初回にチャージする金額を聞かれたり、またいくつかの料金プランがある場合はどのプランにするか聞かれるので、店に行く前に決めておくとよい。アメリカのat&tのように、一定額を先に支払うことでデータ通信が割安になるプランがあったりもする。また、実際に試したことはまだないが、webを見ていると、キャリアによってはテザリングがOKなプランもあるようだ。通信スピードの問題はあるかもしれないが、テザリングが利用できるならホテルの有料ネット接続を利用するより安くすむかもしれない。


■端末の設定

SIMを受け取ったら端末に装着して、予め調べておいたAPNを設定する。大きな店やキャリアの直営店だと、困ったときに店員にヘルプしてもらえる可能性が期待できるし、非英語圏でも英語を理解してくれる店員がいる確率も高まるので、SIMはなるべく大きめの店で買って、その場で設定することをおすすめする。

なお、SIMには予めPIN(暗証番号)が設定されている場合とそうでない場合がある。設定されている場合には、PINがSIMカードと一緒に書かれているので*4、端末に電源を入れるたびに、この番号を入力する。

購入してから回線が開通するまでには、数十分程度の時間がかかることもあるので、それも計算に入れておきたい。

APNの設定が完了して回線が開通すれば、モバイルネットの利用が可能になる。


■追加チャージ

チャージについては、国やキャリアによって”トップアップ”と言われるなど用語はまちまちだが、ここでは統一してチャージと呼ぶことにする。

追加チャージする方法は、いくつかあるのが一般的で、代表的には以下の方法がある。

  1. ・webからクレジットカード使ったチャージ
  2. ・店頭でのチャージ
  3. ・携帯端末から、予め登録したクレジットカードを使ったチャージ

なお、クレジットカードを使ったチャージでは、使用できるカードの種類やカードの発行国が限定されている場合があるようだ*5。自分のカードが使えるか、時間があるうちに試しておくとよいと思う。

少し慣れは必要だが、端末から指定の電話番号にかけて音声応答システムでチャージする方法は、残額がゼロになってもその場でチャージできるので便利だった。

使わない残額が出る無駄をなるべく少なくするためには、一度に多額のチャージをするよりも、こまめに一定額のチャージを繰り返すほうがよいと思う。


ローミングについて

プリペイドSIMであっても、購入国外でのローミング利用が可能な場合がある。料金プランの設定によっては、実際に利用する国のキャリアのSIMを購入するよりも、他国で購入・チャージしたSIMを利用する方が有利なケースも考えられるので、予め比較しておくとよいと思う。たとえばA国を経由してB国に行く、といった場合、A国で購入したSIMをB国でもローミング使用した方が、B国で改めてSIMを購入するよりも使い勝手が良い、というケースもありそうだ。

その場合、B国に行ってから残額が無くなっても困らないように、購入国外から追加チャージをする方法を調べておくか、購入国に滞在中に十分なチャージをしておくなどの注意が必要だ。


■SIMの有効期限について

チャージを繰り返して使いつづけていないと、割り当てられた電話番号が使えなくなったりSIMカード自体が無効になる。その期限はキャリアによってもバラバラだが、大体は数ヶ月から1年くらい。モバイルネットをメインに使うなら、電話番号が変わっても影響はほとんどないと思うので、頻繁に訪問する国でなければ、滞在中に残額をなるべく使いきってしまい、電話番号は変わってしまうが、訪問1回ごとにSIMを買いなおすと考えておくほうがよいだろう。



以上、まだまだ十分な情報ではないが、今の時点で書ける限りの情報を書いてみた。誤りがあるかもしれない点は先にお詫びし、正しい情報をお持ちの方に教えて頂けたらと思う。また文中で紹介した情報のまとめサイトなどにもご自身の経験と知識を反映・共有して頂けると素晴らしい。

慣れるまではちょっと億劫かもしれないけれど、実際に使うとその便利さを実感するのが、プリペイドSIMを使った海外でのモバイルネットだと思う。重要なポイントは、出発前に十分な準備と情報収集をしておくこと。チャンスがあったら、ぜひプリペイドSIMでのモバイルネット利用を試してみて頂きたいと思っている。

*1:データ通信を利用するために必要な端末の設定情報。

*2:ちなみにiPhone3GとAndroid G1は、GSMの4周波数と3Gに対応しているので、SIMロックがかかっていなければCDMA地域以外はこれ1台でOK。

*3:日本の情報を検索してみたら、ボーダフォンの情報が出てきたりした。

*4:コインで削るスクラッチカード形式になっていることが多い。

*5:たとえば、イギリスのvodafone UKのサイトで日本で発行されたクレジットカードからの追加チャージを試したが、はねられてしまった。