Android Dev Phone1 を試用する(4) iPhoneとの比較(2)

間があいたが、前回に続いてiPhone 3G(以下は単にiPhoneと書く)とADP1の比較を続けて書いてみる。

■外部との接続端子
iPhoneではいわゆるドックコネクタとイヤホンマイクのジャックは独立にあるが、ADP1はミニUSBがひとつしかない。このため、例えば充電をしながら音楽を聴くことはiPhoneなら可能だが、ADP1の場合はできない。

また、iPhoneは音を聞くだけならば汎用品の3.5mmミニプラグを使ったヘッドホン・イヤホン類もそのまま使用できるが、ADP1の場合はミニUSBのため、専用品を使うか、汎用品を使おうとするとアダプターが必要になるだろう。

ドックコネクタAppleの独自仕様とはいえ、ipodと共通なので、ちょっとした電器店に行けば入手できる現状を考えれば、iPhoneの構成の方が使い勝手が良いと思う。

こういったハードの問題は、いくらソフトウェアのバージョンアップを待っても改善されない点であるということは、留意すべき点だと思う。

■同期の機能、プッシュの機能
iPhoneの場合は、iTunesを通じて”母艦”となるMacまたはPCとデータを同期させるという考え方、つまりiPhoneと1台のパソコンがセットとして存在する、という発想が設計の根底にある。購入して最初のアクティベーションも、まずはケーブルで母艦につなぐところから始まる。

これに対して、ADP1のアクティベーションにはPCやMacは不要だ。Googleのアカウント*1でログインすることでアクティベーションが終わる。PC/Macの存在を前提にしていない、というより、正確には”特定の”PC/Macの存在を前提にしていない、ということだろう。この部分は、結構根本的な両者の作られ方の思想の違いであると思う。iPhoneの母艦の発想は、かつての無線通信機能を持たないPDAの時代からのものだ。

iPhoneは有料のmobilemeに加入することで、mobilemeメールのほかカレンダーやアドレスブック(住所録)の同期が可能になるが、ADP1の場合は、無料でGMailをはじめとしたGoogleのサービスとの同期が可能になるだけでなく、メ−ルの新着通知がプッシュされてくる。

mobilemeはオンラインストーレージの機能などもあるので一概に比較しにくいところもあるが、プッシュの問題がどうやら未だに解決されていないことや、mobilemeの値段が年間約1万円ということを考えると、現時点においてはADP1の使い勝手とコストパフォーマンスに軍配が上がりそうだ。

app store と Android market
Android marketは現時点ではADP1ユーザーには有料アプリが提供されていないので、公平に比較しにくいところだ。また、1年にも満たない差とはいえ、iPhone向けのApp storeの充実度は現時点では圧倒的で、やはり提供されるアプリの質と量が今後の成否に直結することはいうまでもない。

その点はさて置いて、仕組みとしてのStoreとMarketの使い勝手に関していえば、どちらも五分五分ではないかと感じている。強いていうと、先に書いた同期の仕組みの関係で、iPhoneの場合はiTunes側でインストールした場合でもiPHone側でした場合でも、同期のときに母艦とiPhoneの間でアプリの転送をすることになるので、アプリが多く重くなるほどに同期の時間がかかるのは、やや難点だ。

一方、母艦との同期が前提なだけに、購入したアプリでも、iPhone上には残さずに母艦側だけに置いておく、といったことが出来る点は安心である。Androidで有料アプリを購入して、それを一時的に使わない時に、iPhoneのようにクラウド側に待避させておくことができるのかどうか。無駄な買い直しは避けたいというのがユーザーの心理だと思われるので、ここは気になるところだ。

■MAPのブックマーク、コンパスモード
旅行先で、iPhoneのマップ機能の便利さを痛感するのが、地図のブックマーク機能である。出発前にでも目的地の施設や店を探して予めブックマークしておけば、現地ではGPS機能で自分の現在地を把握しながら、目的地に向かえばよいのだ。ストリートマップに対応した場所なら、目的地周辺の様子を写真で確認していけばよいので、なおさら簡単に目的地にたどり着ける。


MacWorld会場のMoscone Centerの場所は、出発前にブックマークしておいた

この点、ADP1は、マップのブックマーク機能を探したが現状ではないらしい。見知らぬ場所での使い勝手を考えると、この機能が使えるようなソフトウェア的な対応がされるとは思うが、これがあるだけで、使い勝手はずいぶん違ってくる。

また、ADP1にしかないMAPのコンパスモードでの使用は、使っていて楽しかった。方向音痴な人には切実に便利な機能かもしれない。ただ、地図の読図になれている人には、それほど必要とされないかもしれない。

■バックグラウンド処理
バックグラウンド処理が可能なことも、現時点でADP1のiPhoneに対する優位性の一つだ。起動しておけるアプリが1つだけではないことは、確かに便利なのだが、一方で気になるのはバッテリーの消耗。17日に発表されるというiPhoneOS3.0では、iPhoneでもバックグラウンド処理に対応するという噂があるが、思わぬアプリが見えないところでバッテリーを食っている、ということになると、手放しで歓迎できない気もする。悩ましいところである。

■画面のタテヨコ表示切り替え
iPhoneは加速度センサーでの切り替えが基本となるのに対して、ADP1では、液晶をスライドしてキーボードを出した時にヨコ画面にするという切り替えが基本になっている。ADP1の出荷時の状態ではソフトキーボードがないので、キーボードを開かないと何も入力ができない点も含め、現状ではiPhoneが使いやすいが、これもソフトウェアのアップデートで解決できる範疇のことだろう。

■ハードの作り方に起因する問題
ADP1で気になったハードの設計の問題は、スピーカーの位置とカメラのレンズ保護の問題である。両者とも、ストレートな背面にあるため、机に置くとスピーカーの音が聞こえにくくなるし、カメラのレンズ部分が傷つかないかも心配になる。このためと思われる、小さな突起が背面のパネルにあるものの、これが本質的な問題の解決になっているとは思えない。iPhoneは、スピーカーは側面に位置し、カメラのレンズも背面のカーブにあって傷つきにくい位置に配置されている点は、よく考えられていると感じる。

SIMカード交換のしやすさ
iPhoneSIMカードは、専用のピンか、またはゼムクリップなどを穴に差し込まないとSIMのトレーが出てこないのに対し、ADP1では、背面のカバーを開けてバッテリーをはずせば、容易にSIM交換が可能だ。SIMロックフリー機の存在を意識しているかどうか、という差かもしれないが、プリペイドSIMを活用することを考えるなら、ADP1が便利ではある。
スクリーンショットの可否
細かいことになるが、iPhoneではホームボタンを押しながら電源ボタンを押すことでスクリーンショットが簡単に撮れるが、ADP1ではスクリーンショットが一般ユーザーには簡単にはできないらしいことも、違いとしてあげられる。これができるかどうかで、画面に表示された情報を簡単にメモできるかどうかが決定的に違う。いくら該当のサイトをブックマークしておいても、圏外であれば表示させることができないし、また同じサイトに何度もアクセスする手間と時間を考えると、必要な情報は、表示させた時点でさっとスクリーンショットを撮っておくのがベストである。

小さいこととはいえ、情報を扱うためにこそこうした端末を使うのだから、情報の取り扱いやすさの点では、iPhoneに一日の長があるといえる。


残念ながら、ADP1では音楽関係の機能を使っていないので、その部分の比較はできていないままだが、項目ごとの比較は以上のとおり。

ここまでは箇条書き的な羅列となったが、次稿では、まとめとしてオープンソースとしてのAndroidの可能性とiPhoneの対比について考えてみたいと思う。

*1:もちろん、このアカウントは予めPCなりMacなりで取得しておく必要はある。ただそのPC/Macは自分個人のものでなくても構わない。