iPhone/iPod touchでPCレス・プレゼンテーション!

仕事の関係でプレゼンテーション(プレゼン)をすることは少なくないが、パソコンを持っていなくてもiPhoneiPod touchを使うことでプレゼンをもっと手軽に、いつでもどこでもできてしまう環境が整ってきた。

林信行さんがiPhoneを使ったプレゼンの可能性についてブログに書いていらっしゃったので、昨年末頃からtouchを使ってのプレゼンを始め7月以降はiPhoneも含めて試みてきている自身の経験をもとに、ここで現時点までの私の試行錯誤の結果をまとめておこうと思う。

以下、iPhoneと書いている場合は、特に断らない限りiPod touchも含むものと読み替えて頂ければと思う。

■自前で用意する機器類

私は、プレゼンに必要な下記のものを写真のような袋に入れてひとまとめにしている。

コンポジットケーブル(白のケーブル 約1.8m)
延長用コンポジットケーブル(黒のケーブル・オス/メス 2m)
□ACアダプター(iPhone用)
AirMac ExpressYouTubeをプレゼンに使う場合)
□LANケーブル(AirMac Express用 黄色のケーブル)

延長用のケーブルは、コンポジットケーブルの長さが足りない場合が結構あるので市販品を買い足した。私は2mのものを使っているので、2つつなげて3.8mほどの長さまで対応できる。延長ケーブルは長めのものを買っておくとよいと思う。ケーブル売り場にいくと、オス/オスのケーブルは一般的なのに、オス/メスのケーブルは種類が少なかったり、小さい店だと置いていないこともあったので、予め入手しておくほうが安心。

また、プレゼン場所に無線LANが来ていればAirMac ExpressとLANケーブルは不要。圏外でなければ3G接続でYouTubeを再生してもよいが、画質が悪いのでLANが使えるならその方がよい。

袋には入れていないけれど、

iPhoneまたはiPod touch

これはもちろん必須。


■プレゼン場所に用意する(用意してもらう)もの

□テレビまたはプロジェクター(ないし映像出力装置)
 (コンポジットケーブルの入力端子(丸い赤白黄の端子)があるもの)

テレビの場合、スピーカーから音声も出せるので、特に大型のプラズマや液晶テレビがあると最も手軽に、比較的大人数に対してもプレゼンができる。テレビがおいてある会議室、というのが最も活用度合いの高い状況。

プロジェクターの場合は、音声出力を別途考えなければいけないのと、投射距離によってはケーブルの長さに制約されるので、会場のレイアウトを含めた事前の確認と準備はマスト。touchの場合、スピーカーが内蔵されていないので、音声を会場のスピーカーに直接つないで流せない場合に備えて、コンパクトなスピーカーを持参しておけば、そのスピーカーにマイクを近づけて音を拾えば、なんとかしのげる。iPhoneの場合は内蔵スピーカーで同様に。

本格的な会場の場合はコンポジット端子が演台などの近くにあったりするので、端子がどこに来ているかを確認すれば、あまり問題がない。


■プレゼン資料の準備
私の場合は仕事でパワーポイント(以下パワポ)を使用しているので、パワポでプレゼン資料のスライドを作り、それを画像データとして保存、iPhoneの「写真」に転送する、というのが大きな手順。

スライドの作り方として、細かい文字や図表などはパワポから画像データにした時点、およびTVに映し出した時点で判読しにくいものになることが多いので、なるべく大きく作るとか、あるいはそのスライドだけを写真データとして別途用意するなど、工夫が必要なようだ。ただ、この点については、私もまだ試行錯誤が足りないと思うので、もっと手軽でよい方法があるのでは、という気がしている。パワポではなく、AppleKeynoteなどを使うともっときれいになるのだろうか。

また、スライドの周囲の部分はTVなどに出力した時に切れてしまう可能性があるので、あまりスライド一杯に内容を盛り込まない方がよいと思う。

スライドに写真を使う場合は、パワポのスライドに写真を貼付けるよりも、写真自体を1枚のスライド(ファイル)として扱う方が美しい。ただし、後で述べるように、スライドが順番に並ぶようにファイル名を工夫する必要がある。

資料が完成したら、画像データとして保存する(パワポの保存メニューの中に、画像で保存するオプションがある)。データ形式としてgifとjpgが選べるが、これまで試したところでは、容量・画質ともにTV等に出力した時に大きな差がないように思う。ただ、スライドの内容にもよると思うので、どちらが最適か、事前にテストするとよい。

保存すると「スライド1.jpg」「スライド2.jpg」...といった名前のファイルが出来上がるが、10枚以上のスライドを使う場合は、1桁の番号のファイルを「スライド01.jpg」というように、2桁の数字にリネームしないと、正しい順番で再生されない。100枚以上のスライドを使うなら、001と3桁にする。
また、パワポのスライドの途中で写真など別ファイルを差し込みたい場合は、「スライド01-1.jpg」のように、スライド番号に枝番をつけた名前にリネームし、再生したい順番にファイルが並ぶようにするとよい。

以上でスライドファイルの準備ができたので、プレゼンフォルダに名前を付けてひとまとめにし、iTunes経由でiPhone本体に転送する。「写真」のプレゼンフォルダを開くと、下の写真のように左から右、上から下の順番にスライドのファイルが並んでいるはずなので、確認しておく。文字中心のスライドの途中に、写真のファイルも入っていることがお分かりいただけると思う。

また、ビデオをプレゼンで使う場合にも同様に本体に転送しておく。YouTubeを使う場合は、使うものをあらかじめブックマークしておき、すぐに再生できるように準備する。非公開のオリジナル映像資料はビデオを使うことになるが、すでに公開されているものでYouTubeにもアップされているものなどであれば、YouTubeを使うのも便利だと思う。公開してかまわないものであれば、自分であらかじめYouTubeにあげておく、ということも出来る。プレゼン後に資料映像を見たいというリクエストがあった場合なども、YouTubeにありますよ、とお知らせすれば事足りてしまうので手間がかからない。

■いよいよ、プレゼン本番!

ここまできたら、あとはプレゼンをするのみ。コンポジットケーブルをTVやプロジェクターにつなぐのだが、音声(赤白)だけしか接続しないと、iPhoneがTV等を認識してくれないことがあるようだ。ただ、この現象には私もまだ1回しか遭遇していないので、詳細がわかっていない。

スライドからプレゼンを始めるには、上の写真のようなスライドの一覧表示画面にし、スタートさせたいスライドをタップしてiPhoneの画面に表示させる。この段階ではまだTVには何も映っていないので、下のプレイアイコン(右向きの△印)を押すとTV等に映像が出る。スライドを進めるのは、フリックでもよいし矢印のアイコンを押してもよい。何もしないと「設定」で指定された再生時間でスライドが先に進んでいくので、一時停止(|| 印)のアイコンを押してスライドが自動的に進むのを止めておくと自分の好きなタイミングでスライドを進めることができる。

プレゼンの途中、TV等に何も映したくないときには、上の写真だと「写真アルバム」の位置にある画面左上のアイコンをクリックすると映像の送出が止まり、iPhoneの画面は一覧表示にもどる。スライドの途中でビデオやYoutubeをみてもらうときには、この方法で一旦スライドを止めて切り替えるが、その間TVには何も映らないので見苦しくない。

iPhoneiPod機能を使って音楽(音声)の再生をすると、映像は流れずに音声だけが流れる。この音声の再生と、写真(プレゼン用のスライド画像)の再生は同時に行うことができるので、プレゼンにBGMをつけるとか、あるいはプレゼン前後の会場にBGMを流したり、プラスして映像として写真のスライドショーを映して会場の雰囲気作りをする、といったことも簡単にできてしまう。

なお、プレゼン中にiPhoneの電話関係の機能が動作すると何かと不都合なので、プレゼン前にはiPhone機内モードにしておくことを、お忘れなく。

■実際に使ってみての感想
改まってプレゼンということもさることながら、ちょっとした打ち合わせや少人数の会議などでも、手元にあるファイルや写真・ビデオなどを使ってミニプレゼンをすることで、こちらの意図がうまく伝わり、会議や打ち合わせがはかどったりすることも多い。そのようなシーン、プレゼンと呼ぶほど大げさではない状況で、このiPhoneミニプレゼンは大活躍している。

精緻に組み立てたプレゼンもできるが、有り合わせのネタを組み合わせた即興プレゼンの方が、iPhoneプレゼンの醍醐味ではないだろうか。誰もプレゼンが起こることなど期待していないシチュエーションで、荒削りでもパパッと手もとのTVとiPhoneでプレゼンをすることのインパクトは大きい。そんなわけで、私はコンポジットケーブルだけは常にカバンの中に入れてある。

また、使い勝手のいい資料や写真を常にiPhoneにストックしておくようにしている、というよりは、過去のプレゼン資料や、実施した仕事のレポートファイル・ビデオをiPhoneに入れておくだけで、結構役に立つ。

パワポとPCを使ったプレゼンにくらべれば、スライドの作り込みや効果の出し方などの点で、本格的なプレゼンをするには劣ると思う。けれど、音声・スライド・ビデオをスマートに組み合わせたり、BGMなどの演出を加えたりする点では、iPhoneプレゼンの方が上ではないだろうか。なにより、即座にプレゼン=”即プレ”、というサプライズが(まだiPhoneプレゼンが珍しいうちは)あるし、珍しくなくなってしまうくらい一般的になると、”即プレ”できないことがビジネスパートナーにとってこちら側のスピード感の欠如に見えてしまうようになるかもしれない。

いずれにしても、PCを使ったプレゼンとうまく使い分けることがポイントだと思う。本当は、iPhone入手を機にtouchは手放すつもりだったのだけれど、プレゼンマシンとして使うにはバックアップがあると安心なので、プレゼン用の資料等はiPhoneにもiPod touchにも同じものを入れてあり、予めプレゼンが決まっている時には2台持参している。

出張してのプレゼンだと、終了してホテルに戻ったら持参した機材で部屋のTVにYouTubeを流したり、音楽を聞いたりしてリラックス、ということもできるし、コンポジットケーブルは5000円ほどの投資に十分見合うアクセサリーだと思う。